
© 2026 Yui Yamashita
Next Exhibition
JPG's FAVE #5
山下結衣 写真展
『 遠くて近い家 』
2026年7月28日(火) ~ 2026年8月9日(日) ※12:00-18:00(日曜17:00迄) 月曜休廊
公文健太郎コメント
山下結衣の写真を初めて見たのは、2025年の冬、専門学校での半年間に及ぶアジア旅行の成果発表会でのことでした。多くの学生が完成度の高い作品としてまとめるなか、山下の写真には旅先での不安や緊張、他者との距離の戸惑いがそのまま滲み出ていました。
「遠くて近い家」は、山下がこれまで撮り続けてきた自身の家族の写真の延長線上にある作品です。けれどもアジアの農村地域に立った時、その関係は彼女が思い描いたようには近づけなかったのでしょう。代わりに、その心境が素直に写り込んでいました。
山下結衣にとって初個展となる今回の展示。彼女の写真に真っ直ぐに映るのは、想いだけではつながらない世界があるということ。わからない他者がいるということ。ぜひご期待ください。
[ 作家ステートメント ]
私は昔から、人と気持ちよく関わるのが得意ではない。
初対面の人と話すことは苦手だし、人と話しているときに相手に合わせてしまう自分も好きではない。それなのに私は、アジアを旅するなかで何度も初対面の他人の家を訪れ、人と関わり、家族の中に入っ て写真を撮った。
旅に出たら、いつもの自分じゃきっとうまくいかないと思った。知らない土地では違う自分で、人と気持ちよく関わってみたい。だけど、それはやっぱりできなくて、自分を捨てることはできなかった。
ほとんどの家族は、私に「本当の家族だと思っていいよ」と言った。しかし、一緒に食事をして、いろいろな場所に連れて行ってもらい、楽しい時間を過ごしていても、どこか気を抜くことができなかった。日常のやりとりを重ねるうちに慣れてはいくけれど、家族にはなれない。中にいるのに、ずっと外側から家族を見ているような感覚があった。
別れの日には毎回、ホームステイを終えた達成感と同時に、大きな寂しさを感じた。我ながら、自分って勝手だなと思った。家族だとは思いきれなかったのに、もう会えないかもしれないと思うと寂しくなる。
家族ではない。けれど、他人とも言い切れない。
そんな言葉にしづらい距離のなかで、私は彼らと同じ時間を過ごしていた。
山下結衣 やましたゆい
2005年東京生まれ。2026年日本写真芸術専門学校フォトフィールドワークゼミ卒業。2025年には半年間アジア10カ国を巡り、各国の家庭でホームステイをしながら人々や生活空間を撮影した。現在はフォトグラファーアシスタントとして活動する一方、家族など身近な存在をテーマに作品制作を続けている。

© 2026 Masaki Fujimura
Upcoming Exhibition
藤村全輝 写真展
『 Earth Light 』
2026年8月18日(火) ~ 2026年8月30日(日) ※12:00-18:00(日曜17:00迄) 月曜休廊
本展では2025年4月にPURPLEより出版された藤村全輝写真集『Earth Light』に収録された作品を展示いたします。藤村は自身が暮らす東京を舞台に、街の明かりを撮影してきました。住宅の明かりや街灯など、日常の光は作家の視線によって夜空の星々を思わせる像へと変化します。『Earth Light』は都市の夜景を宇宙的な視点から捉え、私たちが暮らす地球の姿をあらためて浮かび上がらせます。
[ 作家ステートメント ]
天文学では地球は太陽を中心とした太陽系の一つの惑星で、太陽の放つ光を反射することで星としての輝きを持っている。現代においては、この星の輝きに加えて私たち人間が社会で使うさまざまな明かりもまたその一部として見ることができる。もし、これらの光を地球から遠く離れた星から見ることができるとしたら、それは誰かにとっての天体観測のようなものかもしれない。
いまの私には、夜空を見上げても遠くにある星を具体的に見ることはできない。もっとも東京に暮らしている自分の家から空を見上げても、街が明るすぎて星はわずかしか見えない。その一方で、見上げなくても前を向けば、星の一つであるこの地球にどのような光が集まっているかはよくわかる。では、この目の前の光は、一体どこからきているのだろうか。それは人が作りだしたもので、その元を辿っていくとどれも太陽の存在にいきつく。エネルギーを作り出すための発電の材料になるような、例えば火力発電における化石燃料は数億年前の動植物の死骸であり、ほかにも水や大気、ウランなども太陽が誕生したから地球に存在するようになったものである。
地球が誕生した46億年前からいままで、現在進行形で蓄えてきている資源やエネルギーが、人間というフィルターによって、街の輝く光へと形を変えている。だからこそ、大都市である東京の夜の街の光を抽出するように写していくことは、地球という一つの星を輝かせる無数の光の粒を意識する機会であると同時に、それらは巡りめぐって太陽であり、宇宙の一部として日常生活があることを意味するだろう。「何撮ってるの?」「街の光です」「あぁ星か」というようなやりとりも生まれてきそうな気がする。
藤村全輝 ふじむらまさき
1983 年奈良県生まれ。日本写真芸術専門学校を卒業後、フォトグラファーアシスタントを経てフリー
ランスとして活動。商業撮影と並行して作品を制作。自身の活動拠点である東京の街を主な被写体に、
社会的風景を知覚や文脈の変化によって捉え直す試みを軸に制作している。2025 年、写真集『Earth Light』を出版。
